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超感覚的!体内ドラマ [第7回]  はい、はい。

「女はな、寂しくて浮気をするんだよ」

「じゃあ、男は!?」

「男はな、確かめたくて浮気をするんだよ」

「確かめるって!?何を!?」

「歳をとると、いろいろと確かめたいところがあるのだよ」

「はい、はい。」

還暦を過ぎた夫婦の会話は、大抵、カミさんの「はい、はい」で終了する。

「だまされたと思って食べてみて…」

「……パクッ」

「どう?おいしいでしょwww」

「……(あんまりおいしくないじゃないか…騙しやがって)」

「ねっ!おいしかった?」

「フツーに美味しかったよ。」

「フツーって!?フツーって何よ!?」

「はい、はい。」

銀婚式も過ぎたカミさんの提案は、大抵、旦那の「はい、はい」で切り上げられる。

「貴方の実家のお墓をどうするの?」

「うん…」

「あのお仏壇はどうするのよ?」

「う、うん…」

「聞いてるの!?」

「はい、はい。」

真珠婚も過ぎた夫婦のドライブの会話は、大抵、「はい、はい」とアクセルを強く踏み込まれた時点で遮断される。逃げ場のない夫婦の会話。〆のお返事は「はい、はい」。ふたつでセットである。「片はい」だと息がつまる。深呼吸もできやしない。

「娘のいまの彼氏のこと知ってる!?」

「うん!?」

「ゴールデンウィークにふたりで沖縄旅行に行ったらしいよ!?」

「ふたりで!?」

「それも四泊五日だって!?」

「ヨンパ…クッ…ゲホゲホ…ゲホゲホ…」

年頃の娘を持つ父の大半は、彼氏の話を誤嚥する。素直に飲み込めない。むせることで異物を排出する反射機能が働く。

・そもそも、その手の話は飲み込みにくい

・飲み込むときに痛みや苦痛がある

・口から食物がこぼれたり、口のなかに残ったりする

・口が渇く

・咀嚼に時間がかかる

・飲み込んだ後に声が変わる

・飲み込む前後や、最中にむせたり咳き込んだりする

・娘への夢と期待が胃の中で逆流したりする

いつまでも異物が残ったままになってしまい、炎症が起こる。カミさんの説得をさえ、噛むことも、飲み込むこともできなくなる。「はい、はい。」の絶対的機能の低下。気軽に話を切ることなどできなくなる。

こういう問題の対策は2つだ。

一、咀嚼(ものを噛み砕く)できるようにする。

この手の話は、突然、湧いてくるから対応できなくなる。常日頃から、娘たちと会話をしたり、LINEをしたり、彼氏との話を、きざむ、軟らかく煮る、マッシュポテトのように押しつぶした状態にする。そうすることで、食べやすくなります。

一、食塊形成(噛んだものを再度まとめる)できるようにする。

はじめて聞いたら、まったく状況がまとまらない。細かく刻んだ話は、逆にぱらぱらしてむせやすくなる。カミさんにお願いして、事前に、話にとろみをつけてもらいましょう。

娘の彼氏の話を、一度誤嚥すると、お父さんの気道の粘膜は傷つき、彼氏という異物に対する反射機能が鈍くなり、誤嚥しても咳が起こりにくくなるため誤嚥したものを排出できなくなり…「お父さん、娘さんをください」という本命の彼氏のご挨拶にも「はい」と素直に答えられないリスクが高くなるという悪循環が起こる。

「娘のいまの彼氏のこと知ってる!?」

「知ってるさ!!同じサークルの加藤くんだろ!?」

「ゴールデンウィークにふたりで沖縄旅行に行ったらしいよ!?」

「知ってるさ!!それも、四泊五日だろ!?」

「学生だよ!?長くない!?」

「俺とお前だったら、せいぜい二泊三日だな!?」

「……」

「はははははははははは…」

「……」

「笑うしかないだろ!?はははははははは」

「ハイ!?」

「はははははははは…」

「はい、はい。」

この問題の根本的な解決は、丸ごと飲み込むために、自分の喉を鍛えるしかない。笑って、飛ばして、大きな声を出して、肺を鍛えるのだ。

「貴方の実家のお墓をどうするの?」

「死んだらチャラだよ!!」

「あのお仏壇はどうするのよ?」

「もう無くても良くね!?」

「えっ!?」

「はははははははは!!」

「女はな、寂しくて浮気をするんだよ」

「じゃあ、男は!?」

「男もな、寂しくて浮気をするんだよ」

「同じなのね!?」

「はははははははは!!」

還暦を過ぎた夫婦の会話は、大抵、肺のあたりが痛くなる。(おわり)

□誤嚥性肺炎について

 食べ物や唾液を飲み込むときに気管に入ってしまい(誤嚥)、肺に入ったままの異物が炎症を起こす病気。通常はむせることで異物を排出しようとしますが、反射機能が衰えると誤嚥が起こりやすくなります。

 予防には、食材にとろみをつけるなど調理方法を工夫したり、喉の筋肉や飲み込む力を鍛えたりすることが大切です。